この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の刻
第19章 その言葉

「でも俺を嫌いになるようなそんな扱いを今までさんざんしておいて、今さら手放したくないとか……どう考えても勝手すぎだろ。
自分にほんと呆れていたよ」
は……と自嘲気味な笑みが聞こえ、その体勢のままそっと先生を見上げた。
先生は反対側の腕で、目を覆うようにする。
そしてまた、溜め息をついた。
「……あの日、透子ちゃんが泣いたの見て、ああもうほんとに終わらせないとだめだって、やっと決められた。
透子ちゃんから離れていくまでこのままでいられたら……なんて、俺の勝手でずるずると関係を続けてる場合じゃないな、って。
身勝手な俺に幻滅して今度こそ俺を嫌いになるように、一方的に切って、連絡も絶った」
突然の関係の終わり。
それからは何度連絡しても返事をくれなかった先生。
その理由をいま聞かされた私は、ただ黙って先生の胸に顔を埋める。
「なのに、今日のあの透子ちゃんだよ。
自分の気持ちをあんなふうに激しく口にして……驚いたし、戸惑った」
だって……、と私は呟いた。
「先生に私の気持ち、どうしてもわかってほしかったから……」
それが叶う、叶わないは別として、ちゃんと伝えたかった。
先生を好きな気持ちを。
どんな関係でも先生と繋がれているならそれに縋りたいと思ってしまったほどの気持ちを。

