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水蜜桃の刻
第19章 その言葉
「── "ちゃんと私を欲しがって”」
先生が不意に口にする。
「……あの言葉はきたね。正直、ぞくっとした」
「っ、あれは……っ」
思い出し、やだもう……と恥ずかしくなって先生の胸に顔を擦り付けるようにしたら
「どうして? あの言葉で俺は完全にやられたのに」
そう続けられて、え……と思わず顔を上げる。
先生の顔からはもう腕が下ろされていて、その視線が私を捕らえていた。
目が合い、どきりとする。
「俺みたいな狡くて自分勝手な男、透子ちゃんにはだめだってずっとそう思っていたけど」
ふ……と口元に浮かぶ笑みを目にした途端に早まった、私の心臓の鼓動。
「それが何? とでも言うように真っ直ぐに俺を求めてくる透子ちゃんの想いに、そんなの理由にならないんだなってやっとわかった。
手放したくないと思った子が、俺をこんなに欲してくれるなら──そう、覚悟を決めた」
真っ直ぐに、私を見つめる先生の目。
「今さらだけどちゃんとしよう……透子ちゃん」
え……? と。
私の口からは声にならない呟きが漏れて。
「俺と、付き合って」
その言葉に、どくん……と心臓が跳ねる。
苦しさに思わず、胸に手を押し当てた。