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水蜜桃の刻
第19章 その言葉


「透子ちゃん」


先生に名前を呼ばれ、さらにきゅうっと胸が痛くなった。
深く息を吐いて、先生に抱きつく。
何か言葉を口にしたら、泣いてしまいそうだった。


「返事は?」


髪に触れてくる、先生の手。
私の答えなんてもうわかってるはずなのに。


「……付き合うの、面倒だって先生言ってたじゃない」


だから、彼女作らないって。


「なのに私とはそんな面倒なこと……してくれるって言うの?」


声が震える。
……ほら、やっぱり泣いてしまった。


「するよ」


そしてその、即答────。

私のために、避けてきた面倒な関係を始めてくれるという、その言葉にたまらなくなった私はもう、何も答えられない。


「覚悟決めたってさっき言ったんだけど、聞いてなかった?」


それでも、ううん、と首を振る。
聞いた、と掠れ声で返事をした。


「そういうの俺、はっきり言うけど不慣れだから、うまくできるかどうかとか……正直よくわからないけど。
でもあんまり困らせないように気をつける。
なるべく泣かせないように、する」


それは、先生の一生懸命な言葉だった。


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