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水蜜桃の刻
第20章 蜜刻
やがて先生がゆらりと身体を起こす。
唾液で濡れた唇を、自由な手の甲で拭いながら。
くちゅくちゅと、私のなかでしばらく遊ばせていた指を抜きながら。
蜜が絡みねとねとになっているその指。
先生は私の目の前に見せつけるように持ってくる。
そうして指はそのままに、整った顔の方を近づけてきて、おむもろに舌を這わせた。
「っ……」
のぞいた、赤い舌。
いやらしい動きで、指を這う。
「……透子の味」
そう、呟きながら。
色を帯びた目を細めながら、私を見つめてくる。
……もう、何も言えなかった。
先生の目に射抜かれたように、動くことすらできなかった。
ただ、見つめ返すことしかできなかった。
だって。
先生の箍を外してしまったのは、私。
そこまでとは知らず、その深い恋情と欲情を解放させてしまったのは、この私なのだから────。
……ぞくり、と。
自分のその考えに、肌は、一気に粟立った。
わかる。
紅潮していく頬が。
目が潤んでくるのが。
まるで呼応するように、私のすべても先生を求めているのが。
「……っ、せん、せ……っ」
呟きは微かだった。
けれどそれが合図だったかのように、先生の手が、動く。
舐めていた指が、先生の視線が、すっと下ろされる。