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水蜜桃の刻
第3章 その唇


「……知らないふりって、何」


先生の口調が抑揚のないものへと変わっていたことに気づかず、私は高ぶる感情のままに続けた。


「だって先生見たんでしょ!?
……これ、見たんでしょ!?」


汚れた、恥ずかしいショーツ。
手に握ったそれを先生に向かって突き出す。


「わかってるんでしょ!? もう!」


私が子供じゃないって。
こんなふうに下着、濡らしたりもするんだって。

はあっ……と。
勢いに任せてそれらを口にした私は、俯いて、ぎっ、と唇を噛む。


どうして先生は普通なの?
私の身体を……お尻を、見て。
いやらしく汚れたショーツも見て。
それなのにどうして普通でいられるの?
私ばっかりこんなにドキドキして。
先生にとってはそんなのさらりと流してしまえるほど、私のことなんて少しも興味ないってこと?


「……だから何?」


そのとき。
かけられた言葉は抑揚のない、いつもの先生とは違うその口調。

今更ながらようやくそれに気づいた私の心臓が、どくん……と鳴った。


「だったら言わせてもらうけど」


すっ……と、細められた目。
その視線の先は、私。
心臓がさらに激しく鳴り始める。


「部屋から突然出て行って、顔火照らせて戻ってきたかと思ったら俺がいないあいだに部屋の中で下着脱いでて。
しかもその下着はなぜか濡れてるし……何なの。いったい何がしたいの」


かあっと、顔が熱くなる。


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