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水蜜桃の刻
第3章 その唇
先生の言ってることはもっともだ。
全部先生が正しい。
私のやってることは、先生から見たらおかしいことばかりだ。
「さっき何してきたの」
「え……?」
「下着こんなになるようなことしてきたんでしょ?」
私は先生を見つめたまま、首を振る。
「なに、も……」
「何も? そうやって知らないふりしてるのはそっちじゃないの?」
「……っ……」
だって知られたくない。
先生に、私がトイレであんなことしてたなんて……そんなの知られたくない────。
必死で首を振る。
急に変わってしまった先生の口調。
その、雰囲気。
……ねえ。
このひとはほんとに先生なの?
たって私の知ってる先生はそんなこと言わない。
そんなふうに言わない。
……言わない、はずなのに。
心臓が早鐘を打っている。
私、もしかして先生を怒らせてしまったんだろうか。
先生のこと優しいと思って、考えてみたらめちゃくちゃなこと言った。
八つ当たりみたいなことをした。
……先生、怒っちゃったんだろうか。
だから。
たから、こんな────。
「いったい、何がしたいの」
無言のままの私に、先生が再び口を開いた。
「……っ」
でも私は何も言えない。
言いたいことはあるけど口にできない。
「言って」
そんな私の頭の中を読んだかのように、先生が促してくる。
俯いて首を振る私に、いいから、と。
その口調に何となく苛立ちを感じ取った私は、息を小さく、吐く。