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水蜜桃の刻
第3章 その唇


ごくんと喉を鳴らし、静かにそれを口にした。


「したい、って言ったらしてくれるの……?」

「……何を」


さらに問われて私は思わず唇を噛む。
それでも、意を決して。


「……セックス……」


そう言って、俯く。


……どうしよう。
また涙、出そう。


はあ……と、感情の高ぶりを逃すように、深く息を吐いた。


「そんなこと口にする子だったんだ」


同じように先生も息を吐く。

恥ずかしくて顔が熱い。
私が先生の知らない一面を見てるのと同様に、先生も私の知らない部分を今、見せられてるんだ────。


「……本気?」


やがて、そう聞かれた。
こくんと頷く私に、また先生は息を吐く。


「彼氏と別れて寂しいから?」


私はふるふると首を振り


「……先生のこと、たぶん好きだから」


そう、小声で答えた。


「たぶん?」

「だって……だってそれ思ったのさっきなんだもん……」

「……は?」


ちら、と先生を見上げるようにして。


「……先生のこと、授業以外でも前からよく考えてて。それで、今日先生と会ったら、なんか……もしかしたら好きなのかも、って思って。
でも……確かに彼氏と別れたばっかだし。先生が優しくしてくれたからそう思ったのかもしれない……っていうかなんかもう自分でもよくわかんない────!」


頭を抱えながら、また私は俯く。
パニックになっている頭では、ちゃんと考えるなんてできない。


やだ。
もうやだ。


「……っ……」


またこみあげてきた感情。
もうどうしたらいいのかわからない。
わからなさすぎる────。


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