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水蜜桃の刻
第2章 欲情
──けど、そんな時間なんかなくて。
唇を噛み、指を抜いた。
なんとなくいやらしい匂いのする蜜が纏わりついているそれ。
ペーパーを取り、拭う。
また取って、濡れてる足のあいだを拭いた。
……早く。
早く戻らなきゃ。
ショーツを上げようとして、あ……とそれが濡れていたことを思い出す。
でも、替えは部屋にしかない。
諦めてそのままはいた。
ちょっと気持ち悪かったけど、我慢するしかない。
レバーを引いて、捨てたそれを流す。
手を洗って、トイレを出た。
はあ……と漏れた溜め息。
やっちゃった。
先生が部屋にいるのに。
「……っ、先生のせいだもん……」
自分に言い聞かせるように呟く。
二階の自室に戻る前に洗面所に入り、石鹸で手を洗った。
鏡に映る自分の頬が少し赤いのが気になったけど、どうしようもない。
急いでそこを出て、上がる階段。
そっと、部屋のドアを開けた。
椅子に座っていた先生が途端にこっちを向く。
どきり、と心臓が跳ねた。
「あ、ねえ」
「え!? あ、はいっ」
明らかに慌てたような返事になってしまい、思わず顔が熱くなる。
「ごめん。おしぼり、ある?」
「え?」
「手がべたべたで」
苦笑いして左手をひらひらさせ、私を見た先生。
「あ……ごめんなさい!」
再び私は部屋を出て、階段を降りてキッチンへ向かった。
おしぼりを出し、濡らす。
絞りながら、キッチン台を見た。
……そこにある、箱に入ったたくさんの、桃を。