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水蜜桃の刻
第5章 その笑顔
……うん、と私は頷く。
先生の言うこと、ちゃんと聞くよ?
先生がそうしろって言うなら、そうする。
先生がだめだって言うなら、諦める。
私、ちゃんとそうやって、聞く。
先生……いい子の私、好き?
いい子でいたら、好きになってくれる?
聞けないその問いを胸にしまって、私は先生の背中に腕を回す。
もう二度と触れられない先生の身体。
苦しくて、胸がきゅうっとなる。
彼氏と別れたときでさえ、こんな感情にはならなかったのに。
なのに今はただ切なかった。
本当に、どうしようもないほどに。
「先生……好き」
それだけを呟く。
今日しか口にできない、その告白。
「好き……」
私の頭が優しく撫でられる。
時間がこのまま止まってしまえばいいのに──なんて、ふだんなら笑ってしまうようなことを真剣に考えてる自分がいた。
叶わないってわかってる。
だからきっとこんなにも、この感情は切ない。
そう。
確かにこのとき、私は先生に恋をしていたんだ────。