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水蜜桃の刻
第6章 予感


……そうして、いつも思い出してしまう、先生とのあの時間。

夢のようだったなと、そんな幸せな気持ちと、ほんの少しの胸の疼き。
それも、いつも通り。


誰にも話していない、あのときのこと。
先生との約束は今も守っている。


誰かに話して、それはただ遊ばれただけだと──客観的に見ればそうとも取れるだろうことはよくわかっていたけど、それでもそう非難されるのはいやだった。


だって先生は、私の望みを叶えてくれただけなんだから。


遊びとか、どうとか、そんなのはどうでもよかった。
あのときの先生の気持ちは先生にしかわからない。
でも、私は間違いなく幸せだと思っていたんだから……と、そう思いながらまたひとくち桃を口に運んだ。


そしてきっと、同僚の彼にもし告白されたら、たぶん私は受け入れるだろう。
甘い果汁を口いっぱいに感じなからそんなふうに、思う。


夢は、夢。


26歳になった私には、もうそれがわかっていて、今考えると16歳の私のあの行動力には思わず苦笑いを浮かべたくなってしまう。
その程度には、大人になっていた。


はあ……と、深く息を吐く。


いつもこの時期は、どうしても時々こんなふうになる。
ちょっとだけ、センチメンタルな気分に。


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