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秘愛
第2章 動き出す・・
壁際で、人の行き来に煩わされない場所を選んで座った。
遙香は店を物珍しそうに眺めまわした。
焼き鳥を焼く煙、タバコの煙。
もうもうと白く湧き立つ煙りを手でハラった瞬間、あっと声をあげた。
「いっけない!私タバコケース忘れてきた!」
「そう、忘れてましたよ、ほら」
後で渡そうとポケットにしまっていたタバコケースをテーブルに置くと、
遙香は恥ずかしそうに頭を下げた。
「こんな高そうなタバコケースを置き去りにしちゃうほど浮かれちゃったんですか?」
意地悪そうに眼を細めてニヤリと笑うと、遙香は口をとがらせた。
「別に!浮かれてなんかいないわよ!
篠宮くんこそ、オレ、ハート掴んじゃった?とか
自惚れた事思ってんじゃないの?」
「奥村さん、飛躍しますねぇ。
そこまでスラスラ出てくると実はそれが本心?なんて思っちゃいますけどねぇ」
まぁ図々しい!と再び遙香が口をとがらせた。
いつもの引き締まった顔つきよりもこっちのほうが全然かわいいな、と
孝明は口角をあげた。
それと同時に、初めて2人きりで膝付き合わせたのに、
こんなにも自然で遠慮なく言いあえることに少なからず驚いた。