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秘愛
第5章 この手の中に
立派なビルのエントランスを抜けると、小さな樹木の植わる庭へと道が続く。
そこから地下鉄の駅までの間、人通りもなく、
静かに夏の夜の蒸し暑さの中を並んで歩く。
暗闇の中でも遙香の顔は、明るく輝いて見えた。
「その様子だと・・吹っ切れたみたいですね」
遙香の歩調に勢いがある。
あの3週間前の、引きずるような足取りではない。
遙香は眼をクリッとさせて孝明を見上げる。
「うん・・私、終わらせようと思う。
実らない恋にしがみつくのはもうやめる・・
あれからまだ彼に会ってないからこれからだけど・・
ちゃんと別れようと思う・・」
目が輝いている。
頬も上がっている。
表情の一つ一つが前向きな気持ちを表しているように孝明には見えた。
そんな遙香を見習って自分も前に進もうと、
遙香の肩に手をかけ立ち止らせた。