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おなとも!
第2章    
「俺生まれてはじめて人に褒められたぁ」

 グウの音も出ないとはこのことだ。
 彼は人智を超えたレベルの変態らしい。

「タカハシさんっていい人だなぁ」

 変態だと罵った私が彼の概念の中ではいい人ということになるのならば、彼にとって世界はいい人だらけになるのではなかろうか。

「え・・・あの・・・」
「変態って言われたらゾクゾクするなぁ。ああ、人とナマで話をするってのも案外悪くないもんだなぁ」

 悦に入った男の顔というのは二次元の世界で毎日のように見ていたが、現実社会で見たのはこれが初めてである。

「俺ぇ、この高校入ってホントよかった。俺、タカハシさんに出会えてよかったよぉ」

 ホワムーはボランティアに精を出す心の純真な子供のような表情で私を見つめている。目は見えていないがきっとキラキラ輝いているに違いない。

「あぁ、今日まで生きてきてよかった」

 というかもしかしたらうっすら涙を浮かべてるレベルかも知れない。
 ホワムーはアリガトウアリガトウと私に繰り返しているが、ここまで不明瞭な理由で人から感謝されたは無論初めての経験である。

 その時、全校生徒帰宅のチャイムが夕暮れ空にキンコンカンコンと鳴り響いた。 

 あぁ、今日も死に損ねた・・・。
 オレンジ色に染まりながら肩を落としていると、ホワムーはビデオカメラをコンクリート床の上に置いた。
 録画モードのランプは赤く光ったままである。
 もはや何個目か数えるのも面倒なクエスチョンマークを浮かべて彼を見ると、彼は相変わらずプルプルな唇からギザギザの歯を剥き出したまま、こう言い放った。


「この感動を忘れないうちに俺ぇ、ちょっとオナニーするわなぁ」


 言葉を失っていると、ホワムーは徐ろに立ち上がり、バーバリーのセーターをへそのあたりまでたくし上げると、何のためらいもなくベルトを緩めた。ボタンが外れチャックが下がると、中からこれまたウエストゴムのとこがバーバリーチェック柄の黒いボクサーパンツが姿を現した。
 オナニーすると宣言しただけに、前の部分がハンパなくモッコリしていた。


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