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おなとも!
第2章    
 私はそのようなことを言って、背の高いホワムーのまわりを餌を強請るアホな子犬のような動きでぐるぐる回った。
 しかしホワムーは無情にもビデオを天高く掲げて私に略奪されないよう万全を期した上で、

「いやだよ。消したら俺が今日帰ってからオナニーできなくなんだろぉ」

 と言って、サッサと屋上から出ていこうとしている。

 私は焦りに焦った。
 急いで自分の荷物を抱え上げると脱ぎ捨てていたニューバランスに足を突っ込んで、ホワムーのあとを追った。

「ちょと待ってちょと待って!」

 屋上の鉄製ドアを開け放ち、階段を下りるホワムーの腰のあたりに半ばタックルする形で私はホワムーの身体にぶつかった。
 ホワムーは「わぁ」と言いながら体勢を崩し、そして私もそれにつられる形で、2人揃って見事に階段から転げ落ちた。

「イッテェー!」

 ホワムーは階段踊り場に背中から着地したようで、痛そうに唸っている。私はというと、彼の腰のあたりにまるで騎乗位するかのような体勢で乗っかったうえで転倒したために軽傷、いや、無傷であった。

「なんだよぉ!いてぇだろー!」

 ハッと気付いて、ホワムーを見下ろす。

 するとエロゲーの主人公を彷彿とさせる両目隠れの前髪が重力によってうしろに流れ、顔の全体像が露わになっていた。


 実はイケメンだったりして・・・!


 などと心のどこかでホンの少し期待していたのだが、無論というべきか、私の身体の下に存在したのはイケメンという概念からはかけ離れた美肌男子高校生のいかつい秋田犬のような顔であった。


「ご、ごめん!怪我なかった?」


 私はキモイブサ顔を落胆と焦りが主成分の汗で濡らしながら、のそのそ起き上がるホワイトムーミンの膝から慌てて身体を下ろした。


「うう、ケツ打ったぁぁ。ちょっとどうなってるか見てくんない?」


 ホワムーは秋田犬フェイスを苦痛に歪めている。
 私は心底申し訳なくなって、さっきまでの怒りはどこへやら、階段中腹に転がっていたビデオカメラをとりあえず拾って彼のカバンの上に置いたうえで、ホワムーの尻のあたりを覗き込んだ。

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