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おなとも!
第2章    
「ちょ、おぼっちゃまってどういうこと!?」

 階段を駆け下りるホワムーの広い背中に尋ねる。
 ホワムーの髪は肌と同様、無駄にキューティクルが輝いているサラツヤヘアだった。
 天パ歴16年の私はホワムーの光り輝く天使の輪を心底うらやましく感じたが、今はそれどころではない。

 盗撮オナニーが趣味のクラスメイトのことを教師が「おぼっちゃま」と呼んでたじろぐとはどういうことなのか。
 私はすっかりいじめのことも、飛び降り自殺のことも忘却してしまっていた。


「何ってぇ、俺のことだけどぉ?」


 ホワムーは私を振り向きもせず、軽やかな足取りで階段を駆け下り続ける。
 ケツのほうはどうやら確かになんともなかったらしい。
 内心ホッとしたものの、やはりそんなことは今はどうだってよかった。


「俺のことって・・・なに?あんた、おぼっちゃまなの?」


 ホワムーの背中はじきに下駄箱に到着し、自分の棚からピッカピカに磨き上げられた黒いローファーを取り出し、上履きと入れ替えている。
 私はそれをニューバランスのスニーカー着用の上で眺めていた。

 ガランとした下駄箱にホワムーの足音が響きはじめ、同時に声も響いた。首を傾げた形の長い影がホワムーの背中に落ちている。
 顔を上げると、例のごとく首を傾げた格好で、ホワムーが不思議そうに私を見つめていた。


「知らねぇー。お父ちゃまが会社してるから、大人は俺のことそう呼ぶけどぉ?なんかこのガッコウにも寄付とかしてるみたいだしぃ」


 返答を得て私は確信した。
 コイツはガチのタイプのおぼっちゃまなんだ、と。
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