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おなとも!
第2章    
 フェンスの向こうは1mばかりのコンクリートの足場があるだけで、私を遮るものはもう何もない。
 強風がプリーツスカートを捲り上げるがハーパン着用だから恥ずかしくない。
 頭から落ちようか、足から落ちようか。
 目を閉じて空を仰ぐ。
 よく考えれば自室のクローゼットに隠してある段ボール一杯の同人誌、無論18禁をまだ処分していなかった。
 ガンダムSEEDの再放送も途中までしか見ていない。
 小学4年生の頃から続いているペンパルの文通相手のキャサリンへの返事もまだ書いていなかった。
 果たして死ぬべきは今なのか?
 目を開けると雲ひとつない茜さす夕焼け空が見えた。
 同時にキモ男子集団のいやらしい笑顔が浮かぶ。
「インフルは死ぬ勇気もねーんだってさ!」と奴らなら言うだろう。
 勝手な妄想だが無性に腹が立った。

 今でしょ!
 死ぬなら今でしょ!
 明日もあのキモいニキビ面に延々と笑われ続けるなんて耐えられない!
 今死んでどれだけ私が苦しんでいたか奴等に思い知らせてやる、ええい!
 爪先を足場から離そうとしたとき、錆びた鉄製のドアがギィと開く音が壁の裏側から聞こえてきた。

「考え直してくれよぅっ」
「もうあなたとはお仕舞いよ!」

 同時に切羽詰まった男女の声がした。

「なんでだよっ、あんなに、あんなに愛し合ったじゃないか!」
「そうね、でもそれはもう過去のことよ。私はもうあなたを微塵にも愛していないわ!」

 演劇部の練習か?はたまた色恋沙汰の縺れか?
 どちらにせよ、飛び降りるタイミングはすっかり狂ってしまった。

「なぜなんだい!俺は、俺はこんなにも君を愛しているのに!俺のどこが気にくわないって言うんだい!」
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