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彼は天然記念物
第2章 鈍感
「有舂季はさ、鈍感すぎ。」

「え。」

紫狼は苦笑いしながら切り出した。


「それと、俺に隠し事してない?なんか困ったりしてない?」

「…ッ…………………」

やっぱり鋭い……
どうしよう…話すべきかな……
でも無駄な心配掛けたくないし……

「…困ってんなら言え。有舂季に隠し事されるの俺は嫌なんだよ…」

紫狼は寂しげに眉をひそめて、窓を見ながら話し始めた。



「…あのさ、会って一年目のときに、お前がトレーラーにひかれただろ?
そんとき正直…有舂季が死ぬなら、俺も死んでしまいたいって思った。
……ようするに、有舂季は俺にとって、凄い大切な存在なわけ。
だから、そんな存在の奴に、隠し事して欲しくないから、さ…」


…紫狼がこんなにも俺を大切に思ってくれていたとは!


「……ごめん!隠し事してた…。実は、………………………」


そんな紫狼に免じて全て話した。



直樹が女遊びに入り浸り始めてることも、援交切られてバイト探してることも。


聞き終わったあと紫狼は難しい顔して話し始めた。


「バイトは……カラオケ店が募集してたと思うからそれにしろ。それと、直樹の件はだな…うーん……と、さ、………直樹の気持ち…考えたことある?
あれだよ、今はお互いの身を守るために男同士だけど普通にキスしてるじゃん?
あれさ、直樹に話したら、すっげえ形相で睨みながら『許せない』っつったんだよ。………ここまで話しても分かんない?」


……キスを反対した………?
……初耳なんですけど…


「…………ごめん、分かんないわ……」

わからないと伝えると、紫狼は今日聞いてみたらいいと教えてくれた。
この話は誰にも内緒と言うことで授業に戻った。
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