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情画
第6章 夜明け
「お子さんは……
やっぱりいいわ。
ゆっくり飲むのよ。」

沙絵さんは言いかけた事をやめた。
代わりに、ワタシの髪を鋤き始めた。

「お父様の名前、しばらくは知らない方がいいわね。」

「何故ですか?」

「愛してるんでしょう?知らないうちに口走ったら、大変なことになるでしょ?
これは意地悪で言ってるんじゃないわ。」

沙絵さんの髪を鋤く手付きは優しく、母にされているようだった。

「ありがとう沙絵さん。」


「ご主人に求められても、無理な時は断らなきゃだめよ。

心も体もダメになっちゃうわよ。」


飲み終えたカップを置くようにと、沙絵さんがソーサーを出してくる。

「すみません。」

「いずみさん、奴隷としてはいい返事だけど、謝ってばかりじゃだめよ。」

「はい?」

「日本人は謝りすぎなの、ありがとうで済む場合は、すみませんて言っちゃだめよ。」

先生がまた戻ってくる。

洗面器やタオルなどを持って…

「お父様、お薬塗ったりするから、しばらく外してて。」

「そうだね。」

沙絵さんと二人になるのはもう恐怖ではなかった。

「じゃあ沙絵、いずみを頼んだよ。」

そう言って先生はアトリエを出ていった。
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