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情画
第7章 曙
反対側の脇のラインが描かれ、拡げた腕が創られていく。

これが自分の体なら良かったのに…
先生の筆がなぞるのがワタシであって欲しいのに…

願いが叶うことなく、それは紛れもなく沙絵さんのもので、紙の上に命を吹き込まれていく。

歩を進める潔い内ももから踵まてが一気に描かれていく。

反対の脚も次の一歩に向けて創られた。

先生に創られた足は、真っ直ぐに先生に向かう。
拡げた腕が更に開き、必ず抱き止めてくれる人に抱き付こうとしているのさえわかる。

顔の輪郭が描かれ、艶やかな髪が風に靡きそうだった。

何回も涙が溜まり滲んでボヤかしてくれるのに、流れ落ちてしまった。

でも、ここには涙に気づいてくれる人も居ないし、拭える手もなかったのだ。


出発点となるセーラー服とスカート、その歩みから滑り落ちたタイが一気に描かれた。

「沙絵、下絵が終わったよ。休憩しようか。」


そう、絵を描くことも、描かれることも好きだった。
でも、もしかしたら、休憩の時が一番だったかもしれない。

絵を描き、描かれることで高まった愛を、思う存分ぶつけ合い、重ねて合う時…

互いに絵を放り投げてそのまま愛を貪ったこともあった。
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