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情画
第10章 四季咲き

先生が椅子を動かし、見る位置をはかる。
何回か座り直して場所が決まり、テーブルも移動した。

しばらく全身を見回してから、下絵用の筆を取った。

テーマは日常の中にある欲と言われても、何が欲で、どう描かれるのか見当も付かない。

先生を見ようとした。

「そのまま百合を見ていてください。」


先生は色が足りないとは言わない。
日常の中にある欲とは何か…

花器の縁に頭をもたげ、伸び伸びと横たわる百合を見ていた。

女性器の象徴の花。
白い百合は先生に向かって斜に構えて横たわっている。

ワタシの崩れた座り方は百合とは反対に体が倒れていた。

白い花の中心に、雄しべがある。
百合の花粉は色が強くて落ちないので活ける時には取ってしまうのだけど、
この百合はそのまま残してあった。

今まで先生に活けられた百合も確か花粉は取られていたと思う。

毒々しいほどの濃い朱色の花粉が、揺れる水面に合わせて揺れていた。

真ん中にある雌しべの先はねばねばしていて、
風で花粉が落ちれば受粉しやすい造りになっている。

肉厚の花びらは潤う女性器の内側と考えると淫靡に見える。

これも、受粉に役立つ為なのか、中心に近い部分には細かいささくれのような突起が沢山あるのだ。
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