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情画
第10章 四季咲き
人の家の台所を使うなど緊張するかと思ったけど、先生と家族になれたような嬉しさの方が上回った。


先生は包丁さばきも美しい。筆を包丁に代えただけ、元来器用なんだろう。

着物にたすき掛けをした姿は、まるで料理人のようだった。

卵を焼くところを覗かれる。

「沙絵に、卵焼きだけは男の料理だね。っていつも言われてたので、気になってね。」

先生は苦笑いしていた。

「沙絵さんからは連絡きましたか?」

「スティ先についた時に一度だけね。
自分の力を試しにきたんだから、納得できる何かを達成するまで連絡しない。と宣言されましたよ。

写真が届いたという連絡すらしないつもりらしい。」

「そうですか…たくましいですね。」

沙絵さんが、足を少し開き、爪先を外に向けてすっと立ち、腰骨に手の甲を当て、片方は軽く何かを持つように開いている姿が浮かぶ。

「だから何?問題ないでしょ?」
自信に満ちた表情で言いのける姿が…

「先生、寂しいんじゃないですか?」

「そうかな。子育てが終わったという達成感の方が強いかな。
沙織との約束を果たして、晴れて独身に戻れたって思いの方が…」

「そうですか…」

「あ、失敗したかな?」
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