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第10章 四季咲き

｢えっ？｣

｢寂しいから貴女に慰めて欲しいとお願いするチャンスだったね。｣

｢あっ…

大丈夫ですよ。沙絵さんに関係なく、先生のこと大事にしてますから。｣

先生は嬉しそうに綺麗に笑っていた。


｢いただきます。｣

先生がお椀を持つ。
料理など毎日しているのに緊張する。

｢不思議ですね。家にある物で作ったのに、こんなにも味が変わるなんて、
優しいお味噌汁だ。
とても美味しいです。｣


｢味が薄かったでしょうか？｣

｢いや、本当に美味しい。丁度いい。

沙絵の味噌汁は辛いんだ。それこそ不思議で、味噌の量を僕が見てやっても辛くなる。｣

｢へぇ…そんなものでしょうか。｣

二人で笑う。
一緒に作って、食べる幸せも噛み締めた。


沙絵さんのことを明るく話す先生。
沙絵さんの潔い巣立ち、自分の為にではあるだろうけど、連絡すら断るところなど、先生を思ってのことだろう。
おかげで先生も悔いもなく新しい生活を始められた。
まだまだ子供のはずの沙絵さんに感謝した。


｢僕、この卵焼き好きだな。和食の時は毎回作って欲しい。いや、毎日でもいい。｣

｢それは誉めすぎだと思いますよ。｣

｢そんなことないですよ。｣