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情画
第12章 レッスン
話ながら絵を進めていたけど、先生の描くスピードは早い。

見たままを描き写す機械のように迷いなく筆が動く。

「貴女のキリの良いところで休憩を入れましょうか。」

「はい。」

ワタシは一番開いている花の一輪を描くのがやっとなのに、先生は群生のすべてを描いていた。

「先生は描くのが速いですね。」

「下絵より色付けに力をいれたいのでね。ある程度色付けで補正できるから、下絵の時に迷わないんですよ。」

「迷いがない。ワタシは色々迷ってばかりですね。」

先生はフッと寂しそうな笑みをたたえていた。


「さて休憩にしましょうか。」

先生が屋敷に戻りティーセットを持ってきた。

カップに何かのジャムを入れ紅茶を注ぐと甘い香りがした。

「何のジャムですか?」

「当ててみてください。」

先生にカップを差し出される。

柔らかい甘い香りが鼻腔に広がった。

味わってもわからない。食べたことがないものだった。

香りは嗅いだことがあるのに…

「わからないです。」

「普段口にするものじゃないですからね。
でも、絵にもしたことがありますよ。」

「あっ…薔薇です。薔薇のジャムですね。」

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