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情画
第12章 レッスン
押し付けるのでなく考えさせて引き出してくれる。
この父子で生活できたら…
ワタシは思わず涙が出そうになった。

先生は実の向こう側に座り実の手元をしっかり見ている。

実も細い茎に丸く影を着けるのに夢中だった。

ワタシはそっと反対を向いて目尻を押さえた。

「先生っ、まあるく見えるよね?」

「うん、見える見える。」

「ママ?ママも見てよ。」

「へっ、あぁごめんね。」

「ママどうしたの?泣いてたの?」

「あくびしたら涙がでてきちゃった。」

「たいくつなら、ママも描いたら?」

「そうね。今度からそうするわ。」

「先生っ、今度は葉っぱを描いていい?」

「うん、いいよ。実くんにもう一つ塗り方を教えて上げよう。」

先生がスケッチブックに濃い丸を描き、指で擦ってクレパスを拡げた。

それを見た実の表情は生き生きしていた。

「これ、二つの色を混ぜられる?」

「やってごらん。」

実は緑の下に黄緑を引き、指で二つを擦る。

「うわぁ、混ざった混ざったぁ。葉っぱはこれでやってみよ。そしたら上から筋を描けばいいもんね。」

先生が小さなヒントを与えるだけで、実の想像力は膨らんでいった。
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