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情画
第16章 露呈
先生に手を掴まれてアトリエのソファーに導かれた。
「お疲れ様、体は辛くないですか?」
「はい。何から何まですみません。実の世話まで…」
「いや、僕も焦ってるんですよ。実の存在を知らないまま過ぎた時間を取り戻そうとね。
でも、沙絵は気づいていたんでしょうね。」
「沙絵さんが?」
「実の絵をみた晩に、やけにしつこくどう思っているのかとか、
貴女だけでなく実のことまで考えて愛せるのか、
と、訊いてきましたから…」
「あ…」
「どうしました?」
「ワタシも思い当たります。
『実くんは…』と尋ねかけて、やはりいいと話を変えられました。」
「僕はね。沙織がもう一度チャンスをくれたと思ってるんです。
無力で守りきれず、これからという時に、何も出来ずに失ってしまった沙織に対して、
無念というか後悔とか、そんな気持ちを持っていたんです。
貴女を失うことはしたくない。実にも寂しい思いはさせたくない。
沙絵にも遠慮しすぎて貴女を失うと言われましたし。
もう、辛い思いは誰にもさせたくないんです。
ご主人には悪いですが、もう離しませんよ。
そして一番大事なのは実ですよ。
兄弟に貴女を取られる、父親が居ない、家も無くなる。急激な変化に合うんです。
僕が本当の父親ということを時期をみて話します。
任せて貰えますか?」