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情画
第17章 新芽
それでいて、クレパスの進める方向で全体を塗り分けている。
水面は横、葉の群生は縦、山は山肌に合わせて斜め、花は丸の集合といったように、
全体の雰囲気はしっかりと掴んでいるのだ。


先生もワタシも息を飲んで白い紙が風景に変わっていくのを見ていた。


「ねぇ、ママ達は、もう描かないの?」

「実の絵が出来るところ見せて?素敵だから…」

「うん、いいよ。」

水面を塗り、遠くに進む道の板を捉え間の葉の群生をクレパスをかえながら塗り込んでいく。

スプーンの持ち方で丸みを帯びた花のグラデーションを表現する。

山肌も緑や地肌の茶色など色を変えながらどんどん塗り上げていく。

空は、水をつけた指でクレパスを伸ばし濃淡や雲を描き上げていく。

形や輪郭に捕らわれずに色と塗りかたの変化で景色を仕上げていった。

「凄いね、実。」

先生が驚いて声をかける。

「だって綺麗な色が沢山あるんだもん。」

実は紙に向かったまま返事をした。

「さて、僕も、もう一枚描こう。」

ワタシも場所を変えて菖蒲の一株を描くことにした。
ハイキングを主とした人に覗かれても構わず描き続けた。
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