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情画
第20章 曼珠沙華
先生が腰掛けたワタシの前に跪き、乳房に両手を置いて揉みながら口を寄せる。
授乳しているような気持ちになる。

ビリビリと体を走る快感は決してそれとは違うのだけど…

「季節外れにならないうちに描きたい絵があるんです。」

先生は西瓜を出してきた。
まさか…
と思ったが、先生は西瓜を一部切り取って、中の赤い果肉が見えるようにした。

そして、緑と黒と赤のベースの色作りを始めた。

脚の付け根から膨らんだお腹へと筆が走る。

皮の模様に合わせ揺れる筆がくすぐったかった。

「ちょうど西瓜ぐらいですね。」

先生は絵に真剣に取り組んでいた。
妊婦のお腹に西瓜を描いて真剣というのも可笑しいけれど。

絵は先生のすべてなのだ。絵で愛も記憶も言葉も表現する。

体ごと、お腹の赤ちゃんごと愛してくださる。

先生の頭を掻き抱きたいところをぐっと堪えた。

「できましたよ。」

ワタシからは上半分しか見えなかった。

背もたれとクッションに寄りかかり固まっていたワタシの腰を支え先生が立たせてくださる。

そして鏡の前に導かれた。

ワタシのお腹は割れた西瓜になり、ぱっくり割れて赤い美味しそうな果肉が見えていた。
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