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情画
第21章 秋
「うやまうってなぁに?」

「大切に思うってこと。」

「じゃあ、絵の道具を持っていっていい?」

「いいけど、どうするの?」

「おじいちゃんとおばあちゃんの絵を描いてあげるんだ。」

「それはいいアイデアだね、実。きっと喜んでくれるよ。」

こうして、実家にいくことが決まった。
厳しいことを言われると思うと、認めてもらえないかもしれないと思うと、正直気が重かった。



「今日はこれを描きますよ。」

テーブルには無花果と石榴の盛り合わせが置かれた。

花の無いいちじくと、実を沢山持つザクロ、どちらも実に特徴のある果物だった。

「無花果の花をご存知ですか?」

「え?花が無いから無花果というのでは?」

「目立たなくなっただけであるんですよ。」

先生は無花果の口のような部分の毛を示された。

「これが花なんです。実を大きくするために花が退化してしまったと言われています。」

「そうなんですね。」

「僕は貴女を無花果にさせてしまったと思っているんですよ。」

「え?」

「母としての時間を早くに、長く持たせてしまったと…
花の、女の喜びの時間より母でいる時間の方が長い。」

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