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情画
第24章 芍薬
「お母様…
こっちを向いて…」
えっ…
沙絵さんにお母様と呼ばれた。
沙絵さんの方を見ると先生に抱きすくめられた。
カシャカシャカシャカシャ…
シャッターを切る沙絵さんの目が優しく弧を描く。
ああ、沙絵さんの母親にもなったんだ。
許されて認められた。
沙絵さんを見る。
「お母様…泣いてないで、笑って…」
「ママ…笑って…」
こんな日が来るなんて…
女王様の命令は守れず。ワタシの視界は曇るばかりだった。
「さぁ記念撮影するわよ。皆さんこの芍薬の前に立って…」
「さぁいずみ、行きますよ。」
先生に手を差し伸べられた。
ゆっくりと歩を進めて皆の元に近づいていった。
もう一度拍手で迎えられる。
「はい、こっちを向いて〜ゆ〜い〜」
カシャカシャ…
「もう一度」
タイマーを使って沙絵さんも入る。
ワタシの隣に入り腰に手を回される。
「お母様…
こう呼べるのに9年かかってしまったわね。」
「沙絵さん…」
ワタシも沙絵さんの腰に手を回す。
カシャカシャカシャ
「さっ、次は家族ごとね。」
清々しい春の風が薔薇の香りを運んでくれた。