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情画
第3章 闇夜
「いずみさん、戻ってきなさい。」

「嫌です。」

「どうして?」

「理由などありません。」

「お父様、抱えてきて、傷つけちゃ駄目なんでしょう?」

ずっと黙っていた先生の足音がする。

嫌だ、来ないで欲しい。
この涙を見られたくない。

横から犬を抱えるように上体の下に手が通された。
屈みながら囁くように言われる。

「僕には貴女が必要だから」

沙絵さんに聞こえないように一瞬かけられた言葉。
意味を聞き違えてないか、何度も反芻する。

『僕には貴女が必要だから』

そのあとは、犬のように抱えられ、ソファーに連れ戻された。

ワタシは涙を見られないように突っ伏していた。

「いずみさん、どうして逃げ出そうとしたの?」

沙絵さんがワタシの頭を撫でてきた。

「痛いことはしていないじゃない。」

背中も撫でられる。

「二人で気持ちよくなってたじゃない。」

優しく、撫でながら、穏やかな声で話してくる。

「私のペットが嫌だったの?ならリードは外すから、でもね、首輪だけはして欲しいの。
貴女のために子供の時に用意していたものなの。」


あの日には用意してあったということ?
歪んではいるけど、それはワタシの存在を許していたということ?
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