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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
満開の桜に囲われた眼下の広大な芝生広場では、キャンディーポットからあふれた原色の飴玉のように、元気な色合いの服を着た子供たちが柔らかい芝の上で転がったり、突然方々に走りまわったりしている。
つまずいて転んだ男の子が、両手をあげて泣きながら母親の元へ走っていく。
引きもきらずさえずる子供たちの、あちこちからあがる軽く明るい歓声が海風に乗って、圭司らがくつろぐすり鉢の尾根まで届いてくる。
芝生いっぱいにひろがって駆けまわる子供たちを見ていると、圭司は、子供への素直な好奇心をいだく自分に気づき、そしてすぐ、あぁ、そうなんだ、このさき麻衣と一緒になれば、俺は自分の子を抱くことはないんだと再確認していた。
そんなことにはすっかり覚悟ができていて自分はどうとも感じてはいないが、ただ、ないものねだりから麻衣自身が子を欲しがるときがくるかもしれない。
それはいつか、克服しなければならない大きな障壁となって自分たちの前に現われるだろう……。
―――――(わかっちゃいるけど、麻衣を愛し抜くとは、それも込みってことだ)
飲みほしたビールの空き缶をクシャッとつぶし、圭司は、にぎやかな広場から視線をはずした。