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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
圭司は、考えを巡らせるうちに異様な不快感をおぼえた。
それは、自分に対してであった。
麻衣にできないのは、
子供を産むこと、それだけなんだ。
あの古宿で、自分は麻衣にそう言った。
なんと軽々な言葉であったことか。
実際の麻衣は解決をみない問題を突きつけられ、彼女は一生、その現実の中で生きていかねばならない。
あの夜、麻衣に言ったことは、彼女の苦悩をあきらめにすり替える言葉ではなかったか……。
芝生広場から遊歩道へと麻衣が消えていく。
風が桜の花びらを散らして麻衣を見えにくくすると、圭司は、奇妙なほどの焦燥に駆りたてられ、舞い上がる花びらにかき消えてゆく麻衣に目を凝らした。
麻衣の小さな背中に不幸の印が刻まれているのを見たような気がして、麻衣が背負う哀しみとその根の深さを思い、涙しそうになった。
――――(俺は、麻衣を孤独にしていたのかもしれない)
麻衣が歩む現実と待ちうける未来を思うと、自分の役割がはっきり見えたような気がした。
そして今までより強く、麻衣を愛しく感じた。
麻衣を孤独にしてはならない。
麻衣の不幸が幸福に変えられないことであるなら、俺もそれを一緒に背負ってやる。
そう思ったとき、圭司の中の不快感はたちまち消えた。
――――(結婚しよう)
圭司は昂(たか)ぶった心の中で、そうつぶやいた。