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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
ふと、男の子を真ん中にして、事務所に迎えにきた父親と、自分に似ているであろう母親の三人を写した家族写真を思い浮かべた。
心の中に浮かんだ家族写真の三人は、見事な調和を持って麻衣に微笑みかけていた。
――――(家族、私には憧れね)
男の子を核とした家族三人の幸福の素性を間近に見たような気がして、麻衣は、それが自分には絶対に手にできない種類の幸福なのだと実感した。
そして自分は、何か大事な役割を与えられずに、女性としての本筋をはずして生きていかなければならない女なんだと、あらためて覚悟した。
覚悟して、すぐ、憂うつになった。いつものクセだった。
しっかり心に決めても、いつもすぐに不安になる。その繰り返しだった。
――――(ああ、また私は……)
くじけようとする自分の弱い心がつくづく嫌になり、いら立って、『ぅんっ!』っとその場で地面を蹴った。
――――(不妊っていうのは、自信を奪うのよ!)
なんだか麻衣はイライラしてきた。
古宿で圭司は、幸せにはいろんな種類がある、と言った。
いったい私はどんな幸せを手にできるの?
麻衣にも見つかるといいなって、
それっていったい何よ!
どこにあるの?
無責任なこと言わないでよ!
そんなふうに憤慨しても、麻衣の心はやはりぐにゃぐにゃとしおれていく。
¨子を宿せない¨
¨女の幸福¨
¨簡単にたどり着けない¨
明確な言葉が自分をあざ笑うように心に浮かび、泣いてしまいそうになった。
――――(泣くもんですか!)
奮い立たせてみたものの、不安になってくる。
圭司はいつまでも、こんな私のそばにいてくれるだろうか。
『やっぱり……』なんてこと言わないだろうか。
私って厄介者なんじゃない?
圭司がいなくなったら、私、どうしよう……。
私、一生、ひとりなんてイヤよ。
イヤだ、イヤ……。