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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
 
『お色気も問題ないです。
 充分、充分』

『そう? 私で満足できる?』

『今より色っぽくなって、
 これ以上夢中にさせられたら、
 こっちの体がもたないよ』

『あらぁ、お豆腐以外に、
 もう一品、増やさないといけないかしら』

『それも、充分だよ』

ふたりは声を出して笑い、パイプゲートをかわして公園を出た。
だだっ広い駐車場に来園者の車はほとんど無く、オンボロワゴンがぽつんとひとつ、屋外灯にぼんやり照らされていた。

なぜかふたりはワゴンに近づくことを拒むかのように、それまでよりさらにゆったりと歩き、ときおり歩をとめて空を見上げたりした。
そこには皓々(こうこう)と月が輝いていた。
未来への約束を交わした若い二人を見守るかのように、おだやかに浮かんでいた。

麻衣が訊いた。

『おうちに帰りたい?』

ああ、麻衣もそうか、と圭司は思った。

『いや、ふたりでいたいね』

『私も……』

向かい合った二人は、もういちど体を寄せあった。
互いの腰に手をまわし、圭司は自分を軸にして、ゆっくりと麻衣の体を左右に揺らした。

『ゆりかごの中にいるみたい』

圭司は黙って微笑み、気持ちよさそうに目を閉じた麻衣を見つめ、しばらくそうしていた。

心を重ねあえる相手がいること。
ともに時間を過ごせること。
互いの実体に触れあえること。

そういった、愛しあう者どうしならば当然のむつみあいを、圭司はこれまでもたびたび、奇跡を体感しているのだと思うことがあった。


 
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