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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
この世というものが始まって、ありとあらゆる事象がひしめきあいながら時の流れにのり、未来に向かって絶え間なく変転していく。
数えきれない物事のうごめきの中で、ぶつかり、はじきあい、まばたきひとつのわずかな瞬間、時の水面(みなも)へ麻衣は現れた。
そんな貴重なものと出逢い、愛しあっている。
同じ時代に生き、同じ空気を吸い、手を取りあう。
これが、奇跡でなくてなんだろうか。
とほうもない数の偶然と意味を見出せない必然によって生じえた麻衣との出逢い。
それは、砂漠の中から一粒の砂をつまみあげるのと同じくらい稀有(けう)な出来事だ。
確率にすればいったい幾つのゼロが分母に並ぶのだろう。
それを思うたび、自分にもたらされた出逢いの尊さにひれ伏して、何ものかに手を合わせたい気分になる。
――――(おまえは、俺の奇跡なんだよ)
圭司は、麻衣の体に手をまわし、力を込めて抱きしめた。
自分に与えられた「時」を麻衣と共に。
そうありたい、と願った。