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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
芋虫のように体をよじらせた麻衣が、圭司の腕から這い出るようにして顔をあげた。
『あのね、
早苗さんと浩二さんには
まだ言わないほうがいいよね』
『そうだな。
あっちは微妙なわけだから』
『うまくいけばいいのに』
麻衣はうなだれて、圭司の胸に額をあてた。
『うん。
そうすりゃ丸く収まるんだけどな』
圭司は、自分の言葉をしらじらしく感じ、短いため息をついた。
おそらく早苗が、渡瀬をより所とすることはこれからもないだろうと、圭司には確信に近いものがあったからだ。
『うまくいくのかな、あの二人。
もし、そうならなかったら、
私たちどうしてればいいのかな』
『そうだなぁ……』
遅かれ早かれいずれ求婚していただろうが、急なことであるのには違いなく、圭司はこれからのことをまったく考えていなかった。
麻衣が危惧をいだくのはもっともなことで、結婚するとなれば共同生活のさまざまな局面で今までにないことが想像される。
新婚生活を気づかって、渡瀬も早苗も倉庫を去ろうとするかもしれない。
だが、同居人と袂(たもと)を分かつ考えは微塵(みじん)もない。
均衡を崩した四人の関係がどう形を変え、どこへ向かって進むのか予想もつかないが、自分たちならきっと大丈夫だ、という自信はなんとなくある。
もし四人が訣別するにしても、共同生活を続けるにしても、その結論は、それぞれが未来に目を向けたうえに出されたものでなければ、いまの自分たちの在りかたが無意味になってしまう。
そうなってはいけない。
しばらくの沈黙のあと、ややあって、麻衣がぽそりとつぶやいた。
『浩二さんは、もっと
早苗さんを求めるべきだと思うの』
『そう? 待っててもダメかな?』
むつかしい顔で麻衣は続けた。