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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
『うん、
女の本心はいつも動くんだもん。
都合がいいって
男の人は怒るかもしれないけど、
女は一瞬一瞬に本心があるわ。
そのどれもが嘘じゃない本当なの。
不思議でしょう?
自分をからかう遊び心がないから、
急ハンドルしたり、暴走したりするの。
だから、男の人に追いかけてもらって、
追いつかれて、捕まりたい。
早苗さんも、きっとそうだと思う』
『ああ……そう……』
『男の人は、外ばっかり見てる。
で、失敗を怖がるわ。
何かするときいつも、
それが、言い訳のできることか
そうでないかを考えるでしょう?
恰好がつかないことを嫌うでしょう?
なにより体裁が大事で、
かっこばっかし気にするのよね』
『ああ、うん……そうかも……』
『待ってるなんて、
早苗さんに失礼だと思った。
引く手あまたの美人なのに。
必死になって追いかけるのが
愛する女性への礼儀でしょう?』
『ああ、なるほど……』
ほんのわずかに怒気を含んだ、麻衣の理路整然とした穏やかなとがめだてに、圭司は大々的にしかられている気がした。
麻衣の言うとおりだと、黙ってうなずくしかなかった。
自分も渡瀬も、早苗を放っておいてあんなことになった。
つまらぬこだわりを捨て、理屈抜きにさっさと捕まえてやればよかったのだ。
プライドや体裁など、あとでどうとでもなっていたのかもしれない。