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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
――――(まったく、耳が痛いよ)
それにしても、あの二人の恋模様について、女性目線でしっかり分析できている麻衣はたいしたものだと、圭司は舌を巻く思いがした。
こういったことは机上の学問で得られるものではない。
麻衣がこれまで生きてきた中で味わった、辛苦と幸福の両方、あるいはその落差から学びとった知恵であろう。
素直に感服した圭司は、つなぐ言葉が見つからず真顔で深くうなずいた。
それを見て麻衣は、ハッとして口をおさえた。
『私、言い過ぎちゃったかも』
『いいんだ、いいんだ。
麻衣の言い分はもっともだよ。
的を射た見解だと思う。
いやホント、感心した』
『生意気でした』と麻衣は口をつぐみ、圭司の胸に額をすりつけ、情状酌量を求めて甘えた。
その甘えかたのどこかに、圭司は、性的な魂胆をはっきりと感じとった。
茂みの奥でじゃれあう男女に刺激されたのだろうか、それは誘いではなく、訴えのように思われた。
――――(それも、本心ってことか)
麻衣が言うような女性独特の心理のアヤを思うと、早苗への恋心が腐りさえしなければ、渡瀬にも勝機があるかもしれない。
『浩ちゃんの間抜けっぷりを、
早苗は恨んでんのかもな。
まぁもう少し様子をみよう。
今度、浩ちゃん連れだして
酒でも飲みながら話すよ』
圭司はもう一度しっかりと麻衣を抱き、頭頂部にキスをして髪の匂いをかいだ。
かすかな汗の匂いが、女そのものを感じさせる。
今朝、抱きしめた枕と同じ香りが種々の連想を生み、圭司のなかで淫欲の尾がとぐろを巻いた。
『麻衣だって、いい匂いがするよ』
圭司は、右手を麻衣の尻ポケットへすべり入れた。
まだ月は明るい。
そのせいではないだろうが、いつになく、性的に麻衣を乱してみたくなった。
麻衣は、圭司の鼻息をくすぐったそうにして忍び笑いをもらし、今日の夜は圭司さんの小屋に私が行く、と屈託なく言った。