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星と僕たちのあいだに
第7章 迷子
今までになかった行為。
その中で麻衣は、重い枷(かせ)を外されたような気がしていた。
ありし日の自分に別れを告げるように、その部分に捺(お)された罪をぬぐうように、我を忘れ、圭司の舌に恥部をこすりつづけ、思うままに水を吐いた。
時を待たずして麻衣の水は、圭司の唾液にまさりはじめた。
麻衣は、めまいするような快楽のさなか、以前あった失神するほどの絶頂を得られるような予感がした。
ふいに、その記憶が思い起こされ、
「セックスが気持ちいいのは、今の麻衣には大事なことだ」
と言った圭司の言葉が、そのときの口調でありありとよみがえった。
その言葉が不思議なほど、自分の深いところにある陰鬱(いんうつ)な部分につながってきて、麻衣は、あぁ、と気づいた。
圭司は私の中の後ろめたさや罪悪感を解っていてくれたんだ。
私の何かを感じてそう思い、ひとりよがりの杞憂(きゆう)に押し流されようとしていた私の手をつかんでいてくれたんだ。
この人は、いつも私を知ろうとしてくれてた。
出会ったときから、ずっとだ……。
そう思えたとき、泣きだしたくなるほどのよろこびが麻衣の胸に突き上げた。
この人となら、私はきっと幸福になれる――――。
麻衣は圭司の顔を自分のほうへ向かせ、視線をそらすことを忘れてしまったかのように、圭司の目をぎりりと見据えた。
『ねぇキス、私にキスして』
せきあげた思いを口ばしった麻衣が圭司の上へなだれ落ち、床の上で重なりあったふたりはきつく唇をぶつけあった。
キスをねだったのは麻衣であったが、とりわけ麻衣のほうから圭司にむしゃぶりついて、噛みつかんばかりに圭司の唇を吸った。
『ねぇ……ねぇ。
私にも……させて』
思いきり唇に吸いついては離し、それを繰りかえしながら、とぎれとぎれに麻衣が言うと、圭司の眼に、ゆっくりと優しげな光がきざした。