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星と僕たちのあいだに
第2章 優しい場所
『どう? 狭くはないだろ?
もともと倉庫だからね』
自慢げに両手を広げる圭司に、
『体育館みたい……』
と答え、麻衣は口をあけたまま周囲を見まわした。
建物の幅なりに渡してある太い丸太から数台の照明器具が吊り下げられていて、麻衣が立っている頑丈そうな材木張りの床を明るく照らしているが、照明から上には光量が足りておらず屋根裏あたりはうす暗い。
視野にはっきり見えないからか、とらえどころなく屋根裏をよけい高く感じさせた。
建物の四隅には丸太で組まれた居住設備らしき建屋が見え、小学校で使われていたような大型のストーブが倉庫の真ん中に置かれていて、アルミの大きなヤカンがのせてあり、それを囲うようにソファが据えてあった。
他にも冷蔵庫や大型テレビが目に入ったが、数少ないそれらの家具が広大な空間ではミニチュアのように見えた。
カチカチとガスストーブに火を入れ、圭司が手招きした。
『こっちおいで、寒いだろ』
『はい、少し』と答えたものの、あまりの広さに圧倒されて麻衣の足は前へ出なかった。
タクシーの支払いを済ませた渡瀬と早苗が『寒い寒い』と揉み手しながら、入り口付近で屋根裏を見あげる麻衣の背中を押して、ガスストーブへとうながした。
『どう? 変わってるでしょ?
っていっても、
あたしは居候なんだけどね』
口を半開きにして周囲を見まわす麻衣に、ストーブに手をかざした早苗がにっこり笑う。
『あそこが圭ちゃんの¨小屋¨、
あっちの角が浩ちゃんの。
あたしはあれ、一番広いの。
あんまり使わないけど、
ステップをおりた向こうがキッチン。
お風呂とトイレはあそこ。
あたしが前に住んでた
賃貸マンションより
いいのが付いてるのよ』
早苗は嬉しそうに倉庫中を差しまわして自分たちの住まいを紹介したあと、今日は一緒に風呂に入ろうと、麻衣の腕を揺すった。