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星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
『目覚めたわね。
ねぇ麻衣ちゃんも味みてよ。
気まぐれにカレー作ったわ』
柄にもないことをしたという照れくささを誤魔化すように、早苗が幾分得意げに声を張った。
手招きする早苗にうなずいて、立ち上がろうとした麻衣の下腹部に痛みが走る。
『あ、いたた……』
麻衣はソファに手をついて顔をしかめ、寝つく前のおろかしい行為を悔やんだ。
『なんだ麻衣、ソファで寝落ちたのか。
スジ痛めるぞぉ』
やれやれという表情で優しく叱る圭司の声を聞いたとたん、麻衣のまぶたは熱を帯びてふくらんだ。
とっさに顔をそむけて首筋をさすり、平静を装った。
『あ、うん。あちこち痛くなるね』
早苗がいなければ、めそめそとべそをかいて圭司の抱擁を求めただろう。
それがなぜかいけないことのような気がして、麻衣は、圭司に甘えかかろうとする心を必死に抱きとめた。
まるであつらえたように無精ひげがよく似合う、笑顔の素敵な私のフィアンセ。
私はこの人を幸福から遠ざけてしまう……。
微笑みながら近づいてくる圭司に、ごめんなさい、と心の中で詫びた。
――――(出会わなければよかったのかな)
胸のうちでつぶやいて、麻衣はブランケットをたたんだ。