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星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
その夜、圭司は麻衣の入念なほどこしに違和感をおぼえた。
普段愛撫を求めてやまない麻衣が、陶然とするほどの技巧をこらして尽くすからである。
まず、ベッドに入るなり麻衣は『私に何をしてもいい』と言った。
手アカのついた遊びを知らない圭司には、いまひとつその意味がわからなかったが、神妙な面持ちの麻衣を茶化すこともできず、いつものように腕に抱いて愛撫した。
麻衣は快感をもてあますように身をよじらせて、『優しくしないで』と言う。
だからといってかじればいいのか、つねればいいのか、麻衣の求めが理解できず圭司は戸惑った。
サディズムに興奮する神経を圭司はもともと持ちあわせていない。
まごつく圭司の下腹部に顔をうずめた麻衣は、挑みかかるように唇と舌先を圭司の性器に這わせた。
反りかえる性器は麻衣の両手で揉みしだかれ、ぬめりを帯びて麻衣の口の中へ含まれていく。
破裂音とともに、濡れた唇からもれる麻衣の激しい息づかいが、耳から煙の出るほどに圭司を興奮させた。
たまらず呻き声をあげる圭司にかまわず、麻衣は性の魔物にとり憑かれたように、全身全霊を尽くして圭司の勃起に舌と唇を絡ませる。
丹念な愛撫によってもたらされた快感が、圭司の背筋から脳天のあいだで往復し、圭司は、こめかみのあたりにひるがえる閃光を何度も目にした。
闇の中にうごめく麻衣は、あまりに肉感的で積極性に富み、『私に何をしてもいい』という言葉の通り、男の願望を自分の肉体に叩きつけられるのを待つような、言うならば、支配者にひざを折る性奴隷のごとき献身ぶりであった。
そうした麻衣の尽くしように圭司がかすかな不快感をおぼえてしまったのは、節度ある女性の日常的な行為とかけ離れた、一連の淫靡な姿勢や所作が、今まで意識の表舞台に出てこなかった、麻衣の過去の男性関係を連想させるからだった。
圭司の勝手な妄想ではあるが、喉の奥に性器を押し込まれたとか、暴力による痛みを与えられたとか、性具でもてあそばれたとか、相手の男が考えうる限りの変態的な行為を、これまで麻衣が従順に受け入れてきたのではないかという、男にとって堪えがたい疑念が圭司に生じた。