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星と僕たちのあいだに
第2章 優しい場所
臆面もなく素肌をさらしていく早苗に、麻衣は見とれた。
スーツを着ていても均整のとれた体つきだと気づいていたが、一糸まとわぬ早苗の身体は、海外の水着モデルのような手足の長さと締まりをみせ、同性の麻衣から見ても惚れぼれする美しい肢体であった。
いかにもオトナの女にしか持ちえない淫靡(いんび)さが、ちょっとしたしぐさや表情の隅々にまでいきわたっている。
『早苗さん、すごくキレイ。
うらやましいです』
『そう?
あの二人は見向きもしないわ。
どこで遊んでるのかしら』
『きっと大事に思われてるんです』
『はぁぁ、そうなのかなぁ。
時々、どうにかしてよって
思うことがあるのよ。
でも、そういう雰囲気すらないわ。
特に圭ちゃんは』
『そうなんですか……』
早苗はひとさし指を立て、怖い顔をした。
『二人はホモじゃないの?
って真剣に問い詰めたのよ』
『ホモ?』
『そうホモ。そしたらふたりとも
椅子から転げ落ちるほど笑ってさ、
もしホモでも相手を選ぶ、なんて、
二人でお腹抱えて笑うのよ』
くすりと麻衣は笑った。
たしかに男二人の共同生活に、これほどの美貌をそなえた女性が飛びこんできて何も起こらないというのは、それなりの性嗜好があの二人にあってもおかしくないとも思えた。
けれども、圭司や渡瀬のような芸術家肌の人間は、凡人とはものの見え方が違うのだろうし、なにより二人とも誠実なのだろう。
もしかすると、欲望の質が一般男性とはすこし違うのかもしれない。
そして、文明の立ち遅れていた倉庫へ転がりこんだという早苗も、二人に対して、ひとかたならぬ想いがあるのだろうと察し、麻衣はそれ以上そのことには触れず、静かに体を洗いはじめた。
背中洗ってあげる、と早苗が言うと、はい、と麻衣は後ろに向いた。
素直に背を向ける麻衣の素朴さが、早苗には好ましい。
『麻衣ちゃん肌きれいなのね。
色も白いし。
髪だってサラサラで。
どうしてこんなイイ女を、
ねぇ……』
なんとか元気づけてやらないと……。
そんな思いで背中を流す早苗の褒め言葉は、しみじみとしたなぐさめになった。