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星と僕たちのあいだに
第10章 揺らぐ鬼火
 

『そのとき哀しかったのは、
 逢えなくなったことじゃなくて、
 彼が食い下がってくれなかったことね。
 私の両親がよほどの脅しをかけたんでしょう。
 その後、彼は大学を辞め、
 何の音沙汰もなくなった。
 私は親と家政婦の徹底管理のもとで
 ほぼ自宅軟禁状態。
 ネットもケータイもない時代よ。
 息苦しい日々を過ごしたわ。

 どうにか大学を卒業して、
 父の紹介で、ある機械メーカーに就職したの。
 そこで別れた夫と知りあったのよ。
 祖父の代から続く会社を
 世界規模にまで押し上げたのは夫の父で、
 夫は社長業を学ぶ真っ最中。

 とってもいい人だったから
 彼の求愛に私はとまどったわ。
 夫の一途さには恐怖すら感じた。
 私は前の恋人をまだ忘れられなかった。 
 だって私たちは引きはがされただけで
 そのときはまだどちらからも
 別れを告げてなかったんですもの』

佐和はサウナルームの天井をぼんやりと見上げながら、十五年前の自分と向きあっていた。
あなたは要領の悪い、薄情な女。
でも誰よりも正直だったのよ、と。

『私の両親は一緒にさせたがったわ。
 私も彼や周囲にもてはやされるうちに
 なんとなくそんな気になりかけてたの。
 
 二十二歳のイブの夜にプロポーズされた。
 そのとき私、彼に質(ただ)したの。
 あなたのことは好き。
 これから愛を育てられるかもしれない。
 でも私には忘れられない人がいます。
 その人は今このときも、
 私の心の中にいます。
 それでも私と結婚したいですか? って。
 いま思えば、
 なんてひどいことを言ったのかと思う。
 でも彼はきっぱり、
 かまいません、と言ったの。

 ずるい女だったのよ。
 彼がそう言うの、わかってたの。
 彼にそう答えさせることで、
 私は自分の逃げ道を彼にふさがせたのね。
 それは前の恋人に続く道でもあったから』

佐和の眼は濡れたように輝いていた。
無数の汗の玉をまとう早苗の腕をちょんとつつき、うらやましいわ、とつぶやいて、佐和は続けた。



 
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