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星と僕たちのあいだに
第2章 優しい場所
帰る道すがら、昼から事務所へ行くという渡瀬を地下鉄駅でおろし、圭司らは倉庫へ戻った。
倉庫正面の巨大なシャッターは巻き上げ機が壊れていて途中までしか上がらなかったが、ふた手にわかれてどうにか荷物を運び入れた。
無事引っ越しを終えると、麻衣はなにか買ってくると言って、港湾地区のトラックターミナルにある、このあたりでは唯一のコンビニへと圭司の自転車を借りて走っていった。
コンビニへの道順を教えたあと、麻衣を見おくる圭司にタバコをくわえた洋介が訊いた。
『かわいいなあの子、
ここに住むのか?』
『そうなんだ。でさ、
小屋、頼みたいんだよ』
『おう、まかせとけ。
予算はたっぷりあんだろうな?』
洋介は煙をはいたあと、抜け目のない表情でニヤッと笑ったが、金銭への執着はどこからも漂ってこない。
『悪いな、
今回も儲けさせらんなくて』
『いい、いい。ヨソにつけとく。
急ぐんだろ? 採寸して帰るわ』
洋介は麻衣の小屋を据えるスペースを巻尺で計り、耳にはさんだ短い鉛筆で手帳に寸法を書きこみながら、麻衣の小屋は独立させず、圭司の小屋と早苗の小屋のあいだにスペースをとるのがいい、と提案した。
そうすることで互いに側壁を共有することになるが、新しく建てる壁は正面の一枚だけで済む。
あとは天井を吊って内装を仕上げれば、材料費もほとんどかからないし全体の見栄えもいいだろう、と身ぶり手ぶりをまじえて言った。
『なんなら、
のぞき穴でも空けとくか?』
洋介は悪だくみの目を細めて、圭司にヒジを入れた。
『はは、その気になりゃ、
壁やぶってくさ』
圭司は脇腹をおさえて話を合わせた。