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星と僕たちのあいだに
第2章 優しい場所
『しかし、お前ら変わってるよな。
早苗ちゃんだってあんなにイイ女でさ。
それで何もないんだろ?』
『早苗はイイ女だけどなぁ、
前から浩ちゃんが惚れてんだよ。
でも、告白して断られたら
生きてけないってさ。
出てかれてもつらいから、
一緒に暮らせるだけで満足だとさ』
洋介は腕ぐみしてうなずいた。
『なるほどな。
純愛というやつか』
『浩ちゃんなりに
俺にも気ィつかってんだろ。
俺も早苗に惚れてんじゃないかって』
『どうなんだよ?』
『わかんね。
でも貧乏写真屋が
幸せにできる女じゃないよ。
それに浩ちゃんが惚れてんだ。
俺が手をだせないよ』
ブレーキをきしませて麻衣が帰ってきた。
前カゴにはみ出すほどの買い物をつめてある。
トラックの脇で荷固め用のロープを巻きなおしていた洋介の若い弟子に、缶コーヒーや菓子パンを配りながら何度も何度も頭を下げる麻衣を見て、洋介はやさしい目をした。
『いい子だな。
あの子が風を吹かせるかもな』
『嵐になったりしてな』
圭司は洋介の肩を叩いて笑った。
ほとんど費用がかからず自分の小屋ができることについて、麻衣はそんな少額でお願いしてもいいものかと恐縮したが、洋介は首を振り、困った時はおたがいさまだ、仲間の役に立てて嬉しいと笑い、資材をそろえて明後日また来る、と機嫌よく帰っていった。
麻衣とふたり、荷解きを手伝いながら圭司が訊いた。
『麻衣ちゃん、
仕事続けるの?』
前の男とその新しいパートナーがいる今の職場に勤め続けることは、麻衣には酷な状況にちがいなかった。
『今の職場は
いずれ辞めるつもりです。
ゆうべ早苗さんに聞いてもらって
何もかも新しくやり直そうって、
そう思えました』
『そっか、そっか。
それがいいな』