この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星と僕たちのあいだに
第10章 揺らぐ鬼火
 
ふと滝沢は、考えこむような難しい顔つきでカップを置いた。
そうしたときの表情は、直樹と同じだと麻衣は思った。

『見たことありませんが、
 篠原さんを好きにさせた男性は、
 きっと素敵ないい男なんだと思います。
 私はその人に及ばないかもしれないけど、
 その人にはないセールスポイントも、
 たぶんいくつかはあると思ってます』

滝沢は言い、しばらくぶりに麻衣へ視線をあてた。
その通りだというふうに麻衣が微笑むのを見て、滝沢は、

『タバコはもう吸いません』

と付け加え、眉を上げて何度かうなずいた。

夜更けの蝉しぐれが、誰かに叱られたみたいにひとときやんで、掛け時計のチクタクが過ぎていく時を静かに知らせた。

帰り際の玄関で、パンプスを履いた麻衣の肩に手を掛けた滝沢は、そのまま麻衣を引き寄せた。
滝沢の胸元が近づいて、麻衣が伏せた顔をあげると、二人は唇をあわせた。

麻衣はキスを許した。
滝沢にではなく、自分に。
その間、微動だにせず、バッグの肩ひもをにぎっていた。
ただ、滝沢がそえた手を払うことも、顔をそむけることもしなかった。
重ねられた滝沢の唇を自分の唇が柔らかく受け止めている事実に、麻衣は、ぼぅっとして自分が何者であるかわからなくなった。
目を閉じたとき、筋肉の巻きついたあの腕が、自分の肩をそっとつかんでいるのだと思った。
その手は、麻衣の腰にも、すぐそばにある大きな胸にも、どこへも動かなかった。

圭司への背信とか、滝沢への愛情とか、そういった説明のつく感情もなく、淫靡な欲望にかられたのでもない。
麻衣がキスをためらわなかったのは、それを拒む理由がどこにもなかったからだった。









第十章 揺らぐ鬼火
 
/381ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ