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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
最終章 夏の終わりに
朝夕の空気に秋の気配がこもりはじめた頃、以前から大きなエンジン音をたて、煙を吐きまわっていた圭司のオンボロワゴンがとうとうその天寿をまっとうした。
撮影現場からの帰り道、オンボロワゴンのエンジンが突然の変調をきたした。
アクセルを踏んでも吹き上がらず、肩で息をするようにしてどうにか少しは進んだものの、しばらく行くとエンジンが止まり、ワゴンはゆるゆると道ばたに力尽きた。
ボンネットを開けた瞬間、せきこむほどの白煙と強い熱気がエンジンルームからもわっと立ち昇り、素人ではどうにも手がつけられないと判断した圭司は、馴染みの修理工場に泣きついた。
ワゴンを引き上げに来た修理工は、一目見てさじを投げた。
年式が古すぎて交換部品も手に入らないだろうし、修理できても他の部分がいつまでもつか知れたものではないと言い、その場であっさりとオンボロワゴンに引導を渡した。
『とりあえずウチで廃車にするよ。
軽だけど代車出してあげるから、
次のが用意できるまで、
当分それ使ってくれたらいい』
圭司は修理工と二人で合掌し、彼岸へと旅立ったワゴンの冥福を祈ったのであった。
工場までワゴンを牽引(けんいん)してもらい、代車に機材を移し変えると軽自動車の荷台はいっぱいになった。
代車は今まで乗っていたワゴンをしのぐ、もはやくず鉄と呼んでもさしつかえないオンボロで、そこらじゅうサビが浮き出ていて、車内にしみついたタバコ臭がひどく、タバコを吸わない圭司は運転席で嘔気(おうき)をもよおした。
『他に代車ないの?』
『あいにく出払っててそいつだけだよ。
帰れるだけありがたく思え。
ぜいたく言うな』
修理工が力まかせに荷台の扉を閉めると、軽自動車はぐらぐらと揺れた。