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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
 
麻衣は乱れた息をととのえようと、体をふるわせて懸命に呼吸していた。
圭司は、そんな麻衣がいたたまれなくなった。
麻衣が悩み苦しんだ末に出した結論を理解できたのだから、それ以上に、麻衣の想いを確かめることも、言いにくいことを言わせる必要もない。
あとは、そっとしてやることだけが、圭司に残された男の体面だった。

バスルームのドアが開く音がした。
長いシャワーを終えた早苗の陰が洗面室に動いている。
やがて、ドライヤーをまわす音が聴こえた。

このことはまだ早苗や渡瀬に知らせない方がいいだろうと圭司は思った。
いずれあの男のもとへ行くのだとしても、それまでのあいだ麻衣がここで暮らしにくくなる。

『わかった。
 麻衣、今まで辛かったろ。
 もう何も言わなくてもいいよ。
 初めて会ったとき、
 気がすむまでここに居ろって、
 そう言ったのは俺なんだ。
 あとは麻衣が、
 どうするか決めればいいよ。
 あいつらには言わない。
 もう気にしなくていいよ』

哀しくも優しい微苦笑をたたえ、圭司は麻衣に手を差し伸べた。

『今まで、ありがとうな』

真っ赤な顔で唇を震わせながら、麻衣は力なく圭司の指をにぎった。
こらえていた涙が、麻衣の両の眼からいっぺんにあふれ出た。

指をにぎられて、圭司は、麻衣の決心が揺るぎないことをあらためて悟った。
さみしさで胸がいっぱいになった。




 
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