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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
 
その夜更け、小屋の扉をノックする音がして圭司が扉を開けると、肩をすぼめた麻衣が暗がりに立っていた。
どうしたのかと訊く圭司に、麻衣は、

『今晩だけ、そばにいさせて下さい……』

とかすれた声で言った。

『それは良くないよ』

圭司は言ったが、少し考えて麻衣を中に入れた。
自分と同じように、麻衣も寂しくてたまらないのだろうと思ったからだった。

『ありがとう』

か細くつぶやいて、麻衣はベッドに身を沈めた。
パジャマを引っ張られ、圭司は戸惑った。
麻衣が決して自堕落にそうしたがるのでないことはわかっていたが、ただ、相手の男に悪いという気がしたのである。
麻衣があの男との新しい愛情生活を支えるにあたって、男からの愛を得るため、あるいは男への好意を太らせるため、本来持ちあわせた思いよりも激しく体を重ねているであろうことは、圭司のなかで確信に近いものがあった。
愛情を感じた者どうしが強く体を求めあうことは、生まれたての愛に臨む姿勢として決して間違ってはいない。
特に女の性の本質には、そうしたものが元から備わっているものだと圭司には思える。
それに、嫉妬の火に油を注ぐことで麻衣をさげすみたくもなかった。

『何にもしないぞ』

と、意地を張る圭司を、麻衣は『いいから』とベッドへ招き入れた。

麻衣の全身から放たれる女の匂いに、いつも通りの反応を示す圭司の股間がひきつった。
いきりたったものが麻衣の体に触れないよう、圭司は枕ひとつぶん離れて横になった。
たった十数センチの二人の距離を途方もなく遠くに感じた。

『圭司さん……』

麻衣のつぶやきに圭司は答えたが、麻衣はそのあと何も言わず黙りこんだ。
そしてまた『圭司さん』と呼び、黙った。
おそらく麻衣は抱かれたいのだろうと、圭司は麻衣の気持ちを察した。
熱くなった体を鎮めるためには、そうするのが一番だとわかっていたし、麻衣の方から身を預けてきたのだから、好きなだけ姦通すればいいのだと圭司は承知していた。
最後の夜になるかもしれないこともわかっている。
けれども、圭司は麻衣を抱こうと思わなかった。



 
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